1. シアノバクテリアのグリコーゲン定量
グリコーゲンの量を調べることは、代謝工学において非常に重要である。
グリコーゲンはシアノバクテリアをはじめとする細菌や、動物における炭素の貯蔵源である。どんなに酵素の活性を増強させても、原料となる炭素がなければ目的物質を増やすことはできない。グリコーゲンなどの炭素の貯蔵源の量を調べることで、目的物質があとどれくらい増えることができるかというポテンシャルを調べることができる。ただし、炭素の貯蔵源はグリコーゲンだけではないので、注意が必要である。
グリコーゲンの定量では、主にグリコーゲンを酸で加水分解した後、単量体となったグルコースを測定している。あくまで「グルコースのほとんどがグリコーゲン由来である」という仮定のもとの値である。
ここでは単細胞性シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803におけるグリコーゲン定量法を示しているが、細胞が壊れにくい・不純物のコンタミが多いなどの要因がない限り、幅広く使える方法であると思う。
溶液・試薬
10%硫酸水溶液(濃硫酸を薄めるのでも構わないが、取り扱いに注意が必要である)。
LabAssay Glucose
http://www.siyaku.com/uh/Shs.do?dspWkfcode=298-65701
※他のグルコース定量キットでも問題ないと思う。昔はo-トルイジンを用いた比色法を用いていたが、o-トルイジンは毒物であるし、値の安定性があまりよくない印象だったので、酵素法を利用した定量キットの方が良いと思う。
器具
ヒートブロック
分光光度計
等量のシアノバクテリア細胞を回収する。当研究室では、OD730 = 1.0 の細胞を30 mL分(すなわち、培養してOD730 = 3.0であったら、10 mL分の培養液を回収するということ)。
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遠心 15,000 rpm (20,800 g) x 1 min
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上清をマイクロピペットで捨てる。
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細胞を等量の3.5%硫酸に懸濁する(300~500 μL)。
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100℃で40分間インキュベートする。
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遠心 15,000 rpm (20,800 g) x 1 min
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上清を新しいマイクロチューブに移す。
上清に含まれるグルコースを定量する。定量キットは使いやすいもので良いと思うが、当研究室ではLabAssay Glucose (Wako, Osaka, Japan)を用いている。
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上清6.7 μLに発色試薬 1 mLを加える(グリコーゲン量によって上清の量を変える)。
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37℃で5分間インキュベート
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OD505を測定する。既知濃度のグルコースを同時に測定し、検量線を作成して、グルコース換算のグリコーゲン量を算出する。
※プロトコールは必ず他の文献などでもご確認ください。